はじめに：水素生成の現状と課題

水素は、燃焼時にCO₂を排出しないクリーンエネルギーとして注目されています。しかしその生産方法、特に水の電気分解においては、コストと効率の両面で課題が残ります。私はこの問題を解決するため、最新の触媒技術と電解装置を用いて効率化の研究を行っています。本記事ではその研究成果と技術の全貌を、実験ベースでご紹介します。

水の電気分解の基本と触媒の役割

水の電気分解では、陰極で水素（H₂）、陽極で酸素（O₂）が生成されます。この反応を効率化するために重要なのが「電極触媒」です。触媒は、化学反応の速度を高める材料であり、より少ないエネルギーで反応を進めることができます。従来は白金が多用されてきましたが、高価なため代替材料の研究が進められています。

最新触媒１：ニッケル-鉄系合金ナノ触媒

私のラボでは、ニッケルと鉄をナノ粒子レベルで合金化した電極触媒を使用。表面積を広げることで反応効率を高め、従来比で約35％の効率向上を達成しました。さらに酸性電解液でも安定動作するよう、特殊なリン酸皮膜コーティングを施しています。

最新触媒２：コバルト-リン触媒の酸素生成効率

陽極側には、コバルトとリンの複合触媒を使用。この組み合わせは酸素生成反応（OER）において非常に優れた触媒活性を示します。実験では、50℃環境下で過電圧を0.29Vにまで抑えることに成功しました。

実験に使用した装置と構成（費用込み）

• PEM型水電解セル（実験用カスタムモデル）…… 約60,000円
• ニッケル-鉄系ナノ触媒電極（陰極2枚）…… 約12,000円
• コバルト-リン複合触媒電極（陽極2枚）…… 約14,000円
• 純水生成装置（RO装置）…… 約18,000円
• 定電流電源（最大20A対応）…… 約22,000円
• ガス収集管と密閉タンク（耐圧型）…… 約15,000円
• 実験用作業台・安全シールド…… 約8,000円

総費用：約149,000円。設置面積は2㎡程度。実験はラボ内の換気設備付きエリアで行っています。

生成効率とガスの純度

生成された水素の純度は約98.1%、酸素は98.6%。1時間あたりの生成量は、水素が約22L、酸素が約11L（常温・常圧・25℃基準）。特に純度の高さは、工業用や燃料電池車用途にも転用可能な水準です。

今後の応用と展望

今後の目標は、触媒のコストをさらに抑えつつ、耐久性を高めること。また、生成された水素の貯蔵技術（メタルハイドライド・圧縮式）との連携も検討しています。家庭用・小規模施設向けのユニット開発に向け、次の段階では24時間連続稼働試験を予定しています。

私アルは、このような未来技術の研究を通じて、より多くの人が「自分でエネルギーを作る」時代を実現したいと考えています。