火星で「呼吸する」時代がやってくる!?
人類の宇宙進出が現実味を帯びる中、「火星で酸素を作る」というSFのような技術がすでに動き始めています。その中核を担っているのが、NASAの開発した「MOXIE(モクシー)」です。これは火星の大気から酸素を生成する装置で、2021年から火星探査車「パーサヴィアランス」に搭載され実験が続けられています。
MOXIEとは?名前の由来と役割
MOXIEは “Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment” の略で、直訳すると「火星における現地酸素利用実験」です。これはその名の通り、火星の現地資源(大気)を利用して酸素を作り出す試みです。地球から酸素を運ぶのではなく、現地で生成することによって、大量の燃料や生命維持資材の輸送を減らすことができます。
MOXIEの技術的な仕組み
MOXIEの基本原理は「二酸化炭素(CO₂)の電気分解」です。火星の大気は約96%がCO₂で構成されており、これを活用します。
- まず、MOXIEは火星の空気を吸い込みます。
- 内部でCO₂を約800度に加熱してイオン化。
- 固体酸化物電解セル(SOEC)を通してCO₂を分解し、CO(一酸化炭素)とO₂(酸素)に変換。
- 発生した酸素は圧力や純度を測定され、システムが正常かどうかを判断。
このプロセスにより、MOXIEは約1時間で6グラムの酸素を生成することができます。これは1人の人間が10分間呼吸できる量に相当します。
実験結果と成功の意義
MOXIEは2021年4月から2023年にかけて合計16回の酸素生成を実施し、すべての季節での動作検証に成功しました。これにより、火星の厳しい気温変化の中でも安定して酸素が作れることが証明されたのです。
この実験は「現地資源利用(ISRU)」の大きな一歩であり、将来の人類の火星居住・帰還計画に不可欠な技術といえます。
なぜMOXIEが重要なのか?
火星に人類を送る際、最大の課題の一つが「酸素」です。酸素は生命維持にも必要ですが、ロケットの燃焼にも不可欠です。火星から地球へ戻るためのロケット燃料として液体酸素を現地で確保できれば、持ち運ぶ必要がなくなり、ミッション全体のコストとリスクが大幅に下がります。
将来的な大型MOXIEの開発
現在のMOXIEは実験用の小型装置にすぎませんが、将来的にはこれを100倍以上のサイズに拡大した「本格的な酸素工場」へと進化させる計画があります。NASAは2030年代の火星有人探査を視野に入れており、有人ミッションまでに大型MOXIEを地上に設置し、帰還用の酸素燃料を準備しておく構想です。
火星での生活を支えるインフラの一部へ
MOXIEのような技術は、単なる酸素供給にとどまらず、将来的には火星での「自立した居住環境」づくりに欠かせないインフラとなります。今後は、酸素生成だけでなく、燃料、食料、水、建材などを現地で調達・生産する「ISRU」の発展が求められます。
まとめ:SFが現実に変わる時代
MOXIEは、火星で生きる・帰るための鍵となる技術です。私たちが夢見てきた「宇宙での生活」が、いよいよ現実のものとなろうとしています。もしも将来、火星に人類が都市を築いた時――その基盤には、MOXIEのような小さな酸素装置が静かに動き続けていることでしょう。
最新の宇宙開発ニュースや酸素生成技術に興味がある方は、ぜひ当ブログをブックマークしてご覧ください!
コメント