宇宙でも使える!閉鎖環境での酸素リサイクルシステムの最前線
投稿日:2025年9月7日
地球を飛び出して宇宙に住む時代が現実味を帯びてきました。ISS(国際宇宙ステーション)や火星探査、月面基地など、閉鎖された空間で人間が生きていくためには「酸素」の供給が絶対条件です。この記事では、最新の酸素生成・再生技術に焦点を当て、宇宙空間での酸素リサイクルの仕組みと未来の展望について詳しく解説します。
1. 宇宙空間で酸素が必要な理由
私たちが普段何気なく吸っている空気の約21%が酸素です。これは地球の大気が自然に維持してくれている環境ですが、宇宙では一切の供給がありません。そのため、宇宙飛行士が宇宙船や月面基地、火星基地などで生き延びるには、酸素を「持ち込む」か「現地で作る」しかありません。
酸素を運ぶ?それとも現地生産?
酸素をタンクで運ぶ方法は限界があります。重く、スペースも取り、何より補充ができないため長期ミッションには不向きです。そこで登場するのが「酸素リサイクル」や「現地生成」の技術です。
2. 酸素リサイクルシステムとは?
「酸素リサイクル」とは、宇宙船や基地内で使われた二酸化炭素(CO₂)を再利用して酸素を生成するシステムです。これにより、酸素供給の自立性が飛躍的に向上します。以下は代表的な技術です。
2-1. セイバー・ライフサポートシステム(Sabatier Reaction)
NASAが採用している方法で、CO₂と水素(H₂)を反応させてメタンと水を生成します。この水を電気分解することで酸素が得られるという仕組みです。
2-2. 固体酸化物電解セル(SOEC)
高温で二酸化炭素を直接分解し、酸素を生成する技術です。将来的には、火星のようなCO₂が豊富な環境での使用が期待されています。
2-3. MOXIE(モクシー)技術
NASAの火星探査機パーサヴィアランスに搭載された酸素生成装置「MOXIE」は、実際に火星の大気(CO₂)から酸素を生成することに成功しました。これは人類の宇宙進出における大きなブレイクスルーといえます。
3. 人工光合成の可能性
最新の研究では、植物の光合成を人工的に模倣する「人工光合成」にも注目が集まっています。水と太陽光を使って酸素と水素を生み出すこの技術は、閉鎖環境でも持続可能な酸素供給を可能にします。
3-1. 光触媒技術
太陽光をエネルギー源として水を分解するシステム。将来的には、月面や火星でも利用可能になると期待されています。
3-2. 微生物や藻類の活用
クロレラやスピルリナなどの光合成を行う微生物を使って酸素を生成する実験も進んでいます。これにより、食料と酸素を同時に確保する仕組みも可能になります。
4. 酸素の貯蔵と分配
酸素が生成されても、それを安全に「貯蔵」し、「必要なときに配分する」システムも重要です。現在では以下のような手法が用いられています。
- 高圧酸素タンクによる一時保存
- 液体酸素(LOX)としての冷却貯蔵
- 酸素発生装置と配管ネットワークの最適化
5. 今後の展望:自給自足型の宇宙基地へ
今後は、宇宙での生活が数週間から数年単位へと拡大する中で、「持ち込む資源を最小限に抑え、自分たちで循環させる」システムの確立が求められます。閉鎖循環型生命維持システム(CELSS)と呼ばれる総合的なシステムの構築が、宇宙開発の鍵となります。
6. まとめ
酸素リサイクル技術は、宇宙探査を持続可能にするための中核技術です。セイバー法、MOXIE、人工光合成、微生物の活用など、さまざまな手段が現実味を帯びてきました。将来的には、火星や月でも「現地調達」「現地リサイクル」が当たり前になる日が来るでしょう。人類が宇宙で暮らす未来は、すでに始まっています。
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