『実演家』とは役者や演奏家や演出家などの事です。
『実演家』の方々は形ある著作物を作製しているわけではないのですが「著作物の伝達に重要な役割を果たしているとみられる」という点が認められ著作権のような権利が与えられています。
役者の演技、演奏家の演奏、演出家の演出にも無断で他人が使用できないような決まりがあるって事ですね。
その著作権に似た権利というのが『著作隣接権』です。
『実演家』に与えられている権利は図にするとこんな感じになります。
今回は、この中の下の方にある『譲渡権』を紹介していきます。
『譲渡権』とはどんな権利なのか、著作者が持つ譲渡権とどう違うのかを調べてみました。
『実演家』だけでなく『著作者』にも「譲渡権」がある
『実演家』だけでなく、著作物を創作した著作者にも「譲渡権」があります。
『著作者』と『実演家』の違いをちょっと紹介しておきます。
①『著作者』とは、著作物を創作した者、「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものでして、その権利を守っているのが著作権となり、著作権の中の著作財産権の中に『譲渡権』がある。
説明している私もわけわからなくなるので上の図を見て頂くと多少わかりやすいかと・・・。
②『実演家』とは、著作物の伝達に重要な役割を果たしている者で役者とか歌手とか、その権利を守っているのが著作隣接権となり、その中に『譲渡権』がある。
こんな感じです。
両方とも著作権法で定められています。
それぞれの譲渡権の内容にどんな違いがあるかを見ていきたいと思います。
著作者の『譲渡権』の条文は何て書いてあるの?
まずは、『著作者の譲渡権』から紹介します。
著作権法の条文を見てみましょう!
第二十六条 (譲渡権) 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
著作権法e-Gov法令検索
まず始めに、映画の著作物が除かれているのは、別の権利、頒布権(はんぷけん)で既に守られているからだそうです。
映画の著作物だけ譲渡権がないわけではないそうです。
なるほど・・・。
さて『譲渡権』の内容ですが、ざっくり説明しますと、こんな感じの事が書かれています。
著作物又は複製物を有償・無償問わず、不特定人・特定多数人に提供する権利を独占する権利が譲渡権。
簡単にするとこんな感じですね。
ここで間違えやすいのは、著作権事態を譲渡するんじゃなくてあくまでも、物の譲渡って事ですね。
絵とかDVDとかを売ったり上げたりって事です。
権利の譲渡の規定ではないってとこがごっちゃになってしまいますが、とりあえず物に対する譲渡のルールだけこの譲渡権で決まっています。
更に、26条の他の項には『譲渡権の消尽(しょうじん (使い切る事))』について記載されています。
譲渡権が消える場合の条件を簡単にまとめますとこんな感じです。
① 著作物や複製物を他人に譲渡したら消える。
② 国外に適正に譲渡されたら消える。
とりあえず、譲渡権の権利を主張できるのは、適正に行われた最初の譲渡の時だけって事だと思われます。
実演家の『譲渡権』の条文は何て書いてあるの?
次に『実演家の譲渡権』の条文はこうなっています。
第二節 実演家の権利 第九十五条の二(譲渡権)
実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
著作権法e-Gov法令検索
実演の録音物又は録画物の譲渡を有償・無償問わず、不特定人・特定多数人に提供する権利を独占する権利。
って感じでしょうか。
しかし、この権利にも著作者の譲渡権同様に最初の譲渡のみ権利を行使できるという規定があるようです。
最初の録音・録画のみに権利の行使が出来る規定を『ワンチャンス主義』というそうです。
つまり最初に適正に譲渡OKといったら譲渡権は消えちゃうって事かな・・・。
まとめ
『著作者の譲渡権』と『実演家の譲渡権』の内容は?
① 著作権者の譲渡権
著作物又は複製物を有償・無償問わず、不特定人・特定多数人に提供する権利を独占する権利。
譲渡権の権利を主張できるのは、適正に行われた最初の譲渡の時だけ。
② 実演家の譲渡権
実演の録音物又は録画物の譲渡を有償・無償問わず、不特定人・特定多数人に提供する権利を独占する権利。
最初の録音・録画のみに権利の行使が出来る。
ざっくりで紹介するとこんな感じになっております。
譲渡権の内容は、ほぼ一緒ってことですね。
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