著作権という権利の中に「著作者人格権」という権利があります。
著作権という権利自体を図にするとこんな感じの細かい権利に分かれます。
著作人格権というのは、例え著作物を他人に譲渡したとしても、著作者自身に残る権利です。
著作人格権の権利は3つあります。
「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」。
今回は、この中の『同一性保持権』の紹介を行ってみたいと思います。
『同一性保持権』ってぶっちゃけ何?
ざっくり言いますとこんな感じの権利になります。
『自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利』
なるほどなるほど。
要は作品の内容やタイトルを勝手に変えられないようにする権利って事ですね。
これを踏まえてもですね。
例題を出されると答えに迷います・・・。
ですので例題を用いて紹介していきたいと思います。
製作会社に作成してもらったプログラムを自分で改良したら同一性保持権侵害になるの?
このコンピューターのプログラム問題はややっこしいです。
もう読むのも嫌になります。
でも頑張りましょう。
え~と。
まず、プログラムの製作を製作会社に依頼して作ってもらったようですね。
この場合、プログラム製作時に著作権を誰のものとする、といった規定を設けていない限り、基本的にプログラムの著作権は制作会社が持っています。
製作会社に著作権があるんなら、勝手に改良したら同一性保持権の侵害になるんじゃない?
ダメでしょ、これ?
どうなの?
という問題ですね。
う~ん・・・。
どっちでしょう。
とりあえずこの問いに関連した著作権法の条文を見てみましょう。
(同一性保持権) 第二十条
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変
三 特定の電子計算機においては実行し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において実行し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に実行し得るようにするために必要な改変
四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変
著作権法e-Gov法令検索
まあ、読んでもわかりづらい条文ですよね・・・。
2項の一なんてわけわかんない。
三十三条の話を持ち出されても分かりませんがな・・・。
今回の例題を解くうえで必要なのは2項の三の内容ですね。
「特定の電子計算機においては実行し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において実行し得るようにする」
「プログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に実行し得るようにするために必要な改変」
要は、『プログラムを他のパソコンにインストールする行為、効果的に実行するために必要な改変は同一性保持権の侵害にはならない。』
って事が書かれているので、例題の改変が『効果的に実行する為に必要な改変』ならばプログラム開発会社に対して、同一性保持権侵害にならないって事になります。
公表後の小説を教科書に載せる時に古い漢字を現代の漢字に変更したら同一性保持権侵害になるの?
これはどうでしょうか。
まあ、教科書に載せる為の許可は取っているんでしょう。
要は、漢字を今風に書き換えることもダメなのかい?って事ですね・・・。
これはですね~。
何んと違う条文を見ないと分からないらしいのです。
教科書に関してはべつのきていがあるそうです。
何だって~。知らんがなああああああ。
条文はこうなっています。
(教科用図書等への掲載) 第三十三条
公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条第一項(同法第四十九条、第四十九条の八、第六十二条、第七十条第一項及び第八十二条において準用する場合を含む。)に規定する教科用図書をいう。以下同じ。)に掲載することができる。
2 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 文化庁長官は、前項の算出方法を定めたときは、これをインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。
4 前三項の規定は、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の通信教育用学習図書及び教科用図書に係る教師用指導書(当該教科用図書を発行する者の発行に係るものに限る。)への著作物の掲載について準用する。
著作権法e-Gov法令検索
これが教科書に載せる時のルールでして、さっきの条文の中にやたらと三十三条って出てたのが上のこれです!
『一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの』
何項の何の話だよおおおおおおおってなりましたが、要は。
『教科書に著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるものは同一性保持権の侵害にならない』って事ですね。
回りくどいけど。
ざっくりこうやって書いてほしいけど・・・・。
とにかく小説を教科書に載せる時に漢字を現代風に直しても、同一性保持権の侵害にはならないって事ですね。
楽曲を演奏する時に別のタイトルを表示して演奏したら同一性保持権に侵害になるの?
これはダメじゃないでしょうか。
まさにこういうのを無くすための同一性保持権なのではないでしょうか。
勝手に変なタイトルで演奏されても困ります!
ダメ!絶対!!
どうでしょう。
この正解はですね。
同一性保持権の侵害になります!
やっぱりね!
『著作物の内容やタイトルを勝手に改変するのは同一性保持権の侵害になる』
この根本的な基本のキですな。
まとめ
今回の内容をまとめてみたいと思います。
同一性保持権侵害になる?ならない?
① 製作会社に作成依頼したプログラムを自分で改良したら? → 効果的に実行する為に必要な改変ならば同一性保持権侵害にはならない。
② 公表後の小説を教科書に載せる時に古い漢字を現代の漢字に変更したら? → 学校教育の目的上やむを得ないと認められるものは同一性保持権の侵害にならない。
③ 楽曲を演奏する時に別のタイトルを表示して演奏したら? → 著作物の内容やタイトルを勝手に改変するのは同一性保持権の侵害になる。
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