役者の演技に著作権が付くのでしょうか?
著作物とは思想・感情を創作的に表現したものですから、演技はどうでしょう?
う~む。
迷いそうですが、せっかく役者さんが演技して造ったものを勝手に他者が利用して利益を得てるのに役者本人が何も言えないのはやはりおかしいです。
そこで、役者・演奏家・演出家などの個人には、著作権と似たような『著作隣接権』という権利が与えられています。
例えば演奏した動画や音源、演技したドラマ・舞台などを他者が無断で使用することを防いだりする権利です。
ざっと図にするとこんな感じです。
今回は、この中の『同一性保持権』とはどんな権利なのか、著作者の同一性保持権とどう違うのかを紹介したいと思います。
著作者の『同一性保持権』の条文は何て書いてあるの?
『同一性保持権』は著作権法で定められていますが、著作者と実演家の『同一性保持権』に違いはあるのでしょうか。
おんなじかな?
とにかくどんな権利を守るルールなのか見ていきたいと思います。
著作権法の条文を見てみましょう!
まずは、『著作者の同一性保持権』です。
第二十条 (同一性保持権) 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
著作権法e-Gov法令検索
ざっくり説明しますと、著作者の意に反して、著作物その者及び著作物のタイトルを変更できない権利って感じです。
こんな感じの権利が書かれていまして、更に何項かあり、そこには例外が記載されています。
ざっくりこんな感じです。
例外
① 教育目的の変更はOK。教科書に載せる為ひらがな表記にするなど。
② 建築物のリフォームはOK。
③ コンピューター用のプログラムのバグ修正・バージョンアップなどはOK。
④ その他著作物の性質や利用の目的に対しやむを得ない変更はOK。コピー時の色の劣化など。
こんな感じになっています。
『同一性保持権』って難しい名前がついてますが、著作者の許可なく著作物やその名前の内容を変えちゃダメって事ですね。
では次に、『実演家』の同一性保持権の条文を見ていきます。
実演家の『同一性保持権』の条文は何て書いてあるの?
『実演家の同一性保持権』の条文はこうなっています。
第二節 実演家の権利 第九十条の三(同一性保持権)
実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする。
著作権法e-Gov法令検索
こんな感じの権利が書かれています。
『著作者の同一性保持権』は著作物そのものの内容やタイトルの変更をさせない規定でしたが。
『実演家の同一性保持権』の場合は「自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないもの」とされています。
名誉を害する変更はダメ!っていう感情的な項目が入ってますね。
更に例外もこんな風に書かれています。
例外
実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は公正な慣行に反しないと認められる改変については、適用しない。
こうなっております。
ちょっと実演家の方の同一性保持権の方が、例外項目が多いですね。
『著作者の同一性保持権』と『実演家の同一性保持権』の違いは?
『著作者の同一性保持権』と『実演家の同一性保持権』を比べてみますと、こんな感じになります。
《条文に書かれている内容の比較》
著作者の意に反して、著作物その者及び著作物のタイトルを変更できない権利。
実演家の名誉又は声望を害する実演の変更、切除その他をさせない権利。
《例外の比較》
著作者の同一性保持権の場合
教育目的の変更はOK、建築物のリフォームはOK、コンピューター用のプログラムのバグ修正・バージョンアップなどはOK、その他著作物の性質や利用の目的に対しやむを得ない変更はOK。
実演家の同一性保持権の場合
実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない変更はOK。
公正な慣行に反しないと認められる変更はOK。
比較するとこんな感じになります。
著作者の方の同一性保持権は具体的な内容が結構書かれていますね。
実演家の方の同一性保持権の内容は結構抽象的な感じです。
公正な慣行に反しなければ良いとか、その辺の項目が付け足されていますね。
まとめ
『著作者の同一性保持権』と『実演家の同一性保持権』の内容とその違いは?
かなりでかいですが、図にするとこうなっています。
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